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ストーリーボードの話をしよう2

ご無沙汰しています、Tです。東京はこないだ雪が降ったと聞きましたが、皆さんくれぐれもお身体ご自愛ください。

さて、われらキャラクターアニメーション科全員の前に立ちはだかるものといえば、フィルム制作です…!!!みんな口を開けばその話で(お互いどこまで進んだかをひたすら確認し合うという全く生産性のない会話ですが)、寝ても覚めても頭のどこかは常にその事を考えている状態、気がつくと遠くを見てため息をついている、恋ってこんな感じですかね。これでも一学期の時点では、冬休み前までにストーリーボードを仕上げて休暇中に描き始めちゃったりして皆より先んじちゃおう、みたいな楽観論をきっと皆密かに抱いていたと思うのですが、とんでもない、冬休み明けてもそもそもストーリーボードすら完成していなかった人が実はほとんどで…。自己嫌悪の極み。

前回のお便りで”ようやく結論が見えてきました”とかぬかしてましたが、そのストーリーを思いついたからといってすぐに作画に入れるかというと、そこからがまた長いんですね。このストーリーでいく!って決めてから、まずそのアイデアを人に説明できる程度のストーリーボードにまとめて、そして覚悟決めて先生や友達に見せて客観的な指摘をもらって、推敲を繰り返していくうちに大枠が見えたら、それを今度はアニマティック(animatics)にしていきます。アニマティックというのは、簡単に言えばストーリーボードを尺に合わせてタイミングを付けたカクカクアニメーションというもの、ですかね。

今までこのアニマティックとストーリーボードの違いがいまいちよく分かっていなかったのですが、一番分かりやすい言い方でいえば、ストーリーボードは一枚一枚の画であるのに対して、アニマティックは動画になっているという点が違うらしいです。そしてアニマティックの方が動きがもう少し細かいです。あまり日本のアニメ制作の行程としては聞かない名前だと思っていたのですが、wikiによりますとどっちかというとCGなど使う映画製作の方でよく用いられる単語なのかもしれません。

で、そのアニマティックもまた推敲を重ねて改善していって、そこまで来てやっと骨組みが完成し、はれてアニメーションや背景美術の方に入っていけるわけです。ふぅ。

こんなに大仰に言ってみせて、どれだけの規模のものを作っているのかと言いますと、90秒です、たったの(笑)しかもカラーじゃなくて白黒で、台詞すら入ってません!これは私が自分で決めたのではなくて、一年生はほとんどの人がこのルールに従って作っています、というのはプロデューサーショーへの応募条件が一年生はこれなんです。このショーというのは、学校内で選りすぐりのその年の傑作が選ばれ、それを業界の方を招いたパーティで放映するというカルアーツ生にとっては夢の舞台。まあ一年生から選ばれるのは大抵いてもほんの数人なので、それに勝負をかけるというよりは、一年生はとにかくまず90秒仕上げるので精一杯だろうから無理するなよっていう学校側の優しさなんでしょうか。

で、私自身がいまどの段階にいるかというと、かなりラフですが作画に入り始めました!

一番最初の行程であり一番重要なうえに一番タフな段階です。難しいし大変ですが、設計図が仕上がってあとは作るだけでいいのですから、ストーリーが決められなかった一学期の終わりとは比べ物にならないほど精神的に健康です…。あの頃は…もうあんな思いは二度としたくない…(笑)お話しした通り、冬休みに入る前にはストーリーを決めようと思っていたのですが、人生最初の作品、あれが描きたい、こんな演出したい、あんなシーンを作りたい、この技法使いたい・・・とか色々考えていくうちに、見事にまとまらなくなったんですよ。

私はまずストーリーありきというよりは、アニメーションとしてこういう映像にしたいというビジュアルの方から入ったので、それらをまとめるストーリーがなかなか思いつかなくて。串団子に例えるならば、差したい団子はたくさん用意できてるのですが、それらを見栄えよく美味しく組み合わせて貫く串がなかなか見つからない、という感じでしょうか。あの頃はまだ90秒がどれくらいの長さか感覚としてよく理解できていなくて、やりたい事にかなり近いんだけど長過ぎるとか、短めにおさめられそうだけどアニメーションとして面白くない、とか、そういうボツ案を無数に生み出していました。そうこうしているうちに12月に入り、焦れば焦るほどしょうもないアイデアしか出てこなくなり、しまいには24時間ごとに違うストーリーを考えている始末で。「頭の中にあるうちは、いつだって、なんだって、傑作なんだよな」って台詞が朝井リョウの小説で出てきて一人で激しくうなずいていたのですが、本当にアイデアって、文字や絵に落とした瞬間に腐り始めるというか。よくアイデアのことを宝石の原石とかに例えるじゃないですか、私はジブリ観すぎたせいでそういう例えを聞くとラピュタのワンシーンを思い出すんですが、主人公二人が炭鉱の底でおじいさんに会い、飛行石に反応して光る石を見せてもらうシーンがあって、まさにあんな感じだと思うんですよ!カキーンと割った瞬間は美しく光っているのに、空気に触れてみるみる間に輝きを失ってただの石に戻っていく、あの感じ。あの期待と落胆を繰り返す毎日でした。その神経衰弱状態で日本に戻ったので、フィルムに対する焦燥感がいつもどこかにある状態で3週間を過ごさなくてはならなかったのは苦しかったですね…。


けれどやっぱり環境の変化というか、自分のホームグラウンドに戻るというのはものすごいインスピレーションになるようで、めいっぱい羽を休めるうちにまともな思考が戻ってくるのが感覚として分かりました。そして年も明けた冬休み最後の数日、1泊2日で行った旅行先からの新幹線の帰りに、今のストーリーの原案となるアイデアが降りてきたんです。それも自由席が満杯だったんで、車両のつなぎ目のあたりの通路で荷物の上に座っているときに。やっぱりスケッチブックと鉛筆はいつでも持っておくべきですね。そのアイデアは24時間経ってもなんとか腐らずに、こうしてバレンシアまで持ち帰る事が出来ました。作品としての善し悪しはとにかく、これにこれからの数ヶ月を捧げていくと思うと、自分にとっては宝石以上に大事ですね…。 オチも何もないので、主人公のキャラクターの一番最初のスケッチを載せて、今回は締めさせていただきたいと思います。ではまた!!! 

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